社長の酒造りコラム シェリーも美味しいと感じる大人になりました
されど生老の話
前回は生老の話でした。
生老の恐ろしさみたいなものを教えてくれたのが河津さんでしたが、
同時に、棚上常温放置の「櫛羅」で生酒の可能性を教えてくれたのも河津さんでした。
何年も常温放置された「櫛羅純米吟醸中取り生酒」が凄く美味しかったように思うんです。
沢山は飲めないかもしれないし、食中酒でもないんでしょうけど。
過去を美化しているだけかもしれませんが。
あの味わいと方向性が近いのはシェリーでしょうか。
昔ワインナリー勤めの頃、ワインの大家戸塚先生に銀座のシェリークラブに連れて行ってもらって
飲んだ時はそんなに美味しいイメージが無かったのですが。
最近は美味しいなと思います。シェリー。
30年でそんなにシェリーが進化したのか、味覚が大人になったのか?
その当時日本に入っていなかった美味しいシェリーが今では日本でも入手出来るようになったんですかね。
で、生老の話。生酒の場合は避けては通れない問題です。
生老ではなくて、火入酒が老ねにくい酵母は開発されてるみたいですけどね。
25年ほど酒造りをしてきて、体感で生老しにくいのかなと思うのは
やっぱり生酛・山廃系のお酒です。
研究論文?もネットで読めます。
これは生老の話ではなくて、乳酸菌による発酵生産物の抗酸化物質による効果のようですが。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/8/106_506/_pdf/-char/ja
この論文を見つけたのは「醴酛」を調べててたまたまです。
生酛・山廃の色んな手間暇には、味わい以外にも大きな意味があったという事でしょうか。
主には乳酸菌の活躍という事のようです。
お米で言うと、山田錦とか雄町は生老しにくいと思います。
最近開発された雄山錦やきたしずくがどうなのかっていうのは不明ですが、
一般米のジャンルである亀ノ尾は山田錦なんかの好適米よりは生老しやすいと感じます。
で、特に生老しやすいのは、圧倒的にアルコール添加のお酒です。
しかもとんでもない味わいになるまで生老しちゃうように思います。
という事で、生酒にする場合は純米酒が良くて、
生酛・山廃系だと素晴らしいという感じでしょうか。
もちろん、なるべく低い温度で貯蔵した方が生老しにくいです。
電気代が掛かりますけど。
でも、生老してても状態によっては美味しいと感じるお酒はありますし、
こちらの熟成の世界についてはまだまだ勉強不足といったところです。
次回に続く。。。